人は変わる。いいようにも、悪いようにも。わたしはそれを知っている。いずれの場合も経験しているからだ。経験上、物事が好転する場合は、その直前、思うままに行動を起こす。その反対の場合、あれやこれやと思考する。人生がいかなるものになるかは、その二つの場合の割合にかかっているように思う。今のところ、わたしの場合は思うままに行動を起こしたことの方が多い。人生のほとんどを、特別な理由がないままに選択してはその道を進んできた。ナオさんとこれほどの仲になったのもそうだ。なんとなく、居心地がよかったため。

家にはいくつものトロフィーや賞、メダルがある。ナオさんが岸根先輩であることに気づくきっかけになった品々だ。必ずなんらかの部活に所属せねばならなかった中学時代と高校時代、新体操部に所属したことに、特別な理由はなかった。幼少期よりそれを習っていたというわけでもなく、決してそれでなければいけないということではなかったのだ。バレーボール部やバスケットボール部と迷ったのだが、最後に新体操部を選んだのは、小学時代のクラブにはあらず、中学校の部活としても珍しいと感じたためだった。

 唯一、あれやこれやと思考した末に選択したのは、大学進学というものだった。当時は、どこか世を斜めに見ていた部分があったのだと思う。その頃に観ていたドラマ作品の影響もあったかもしれない。この世の中、好きなことをして生きていくなど、到底不可能なのだと思っていた。いや、好きなことをするのさえ、許されないようとでも思っていたのかもしれない。

しかし実際は、少し違いそうだ。働くようになっても休日はあるし、自由な時間もある。このまま実家暮らしを続ければなおのことだ。そのときに、うまく好きなことをして、心身を癒やせばいい。思ったほど、世は悪ではないように、この頃思う。ナオさんに出会ってからだ。彼はなんだか、物事を必要以上に大きく捉えないような、無理はしない主義のような、そんな人という印象がある。人は環境で変わると聞いたこともあるが、このようなことを言うのだろうか。