「それにこの字には、随分と重たい希望を込められていてね。『奈』の漢字には『どうして』という意味もあって、『央』はそのままに『真ん中』。それを合わせて、『常にどうしてと思う物事の中心にいる、好奇心の旺盛な人になってほしい』ですって」

 「でも、先輩そういう人じゃないですか?」

 「先輩なんてよしてよ」と彼は笑う。

 「じゃあ、今まで通りナオさん?」

 「それくらいがいいかな」

 「いやあしかし。あの岸根先輩がこんなに身近にいるなんてびっくりです」

 「それは僕も同じだよ。君は僕にとって、憧れの存在なんだ」

 「ええ、なんでわたしなんか?」

 「君は素敵な人だ。当時から、君のような人になりたいと思っていた」

 「ええ……?」ナオさん変わってますねと笑い返すと、否定はしないよと彼も同じように笑った。