近いうちに予定のない日はあるかと尋ねる旨の文字を送ると、すぐに、今日も明日も予定などないと言うような文字が返ってきた。


 茶色の太いベルトを境に、腰から上が白と黄色のギンガムチェック、下が微かに黄みを帯びた白の無地という、膝上十センチメートルほどの丈の、半袖のワンピース。先日、いやに混んだ、初めてエレベーターの定員オーバーを知らせるブザーを聞いたショッピングモールで買ったものだ。ブザーが鳴って、下ります下りますとあの箱を出るというのは一度やってみたいと思ったこともあったのだが、当時のわたしが思っていたほどおもしろいものではなかった。


 呼び鈴を鳴らすと、引き戸はすぐに開いた。「やあ」と笑みを見せる彼は、やはり美しい。宝石と言っても足りない、純氷での氷細工と言っても足りない、なんなら、人形――ドールと言っても足りないほどの美しさかもしれない。宝石よりも影があり、純氷ほど冷たくなく、人形――ドールよりも人間味のある、そんな美しさだ。純粋な顔立ちの美しさだけでない、どこかに見え隠れする憂いのようなものが、その美しさを際立てているように思う。

 中に入ると、彼は廊下を歩きながら、「なに飲む?」と問うてきた。「スペシャルココアで」と言うと、「オーディナリーココアならあるよ」と彼は笑った。「じゃあそれで。冷たいの」と笑い返すと、彼は「了解」と穏やかに言う。淡い桃色の小さな花弁が舞う様を彷彿とさせるような穏やかさだ。