「温かいのと冷たいのどっち?」と、食器を洗いながら問う。「どっちも」と言う増家へ、「間取って常温ね」と返す。直後に「冷たいのでお願いします」と返ってきたので、「了解」と返して準備を始める。

 二歩下がったところに増家がおり、僕はうわっと声を発した。「僕になんの怨念がある」

 「びっくりした?」と笑う彼へ「二秒死んだ」と返す。

 「見せてよ」と言う増家へは「なにを」と返す。

 「お茶点ててるところ」

 「なんで。別に珍しいものでもあるまい」

 「珍しいよ。身近にお茶点てられる奴なんていないもん」

 僕はため息をつき、増家から目を逸らした。「……あまり細かいところは見ないでよね」

 「勉強させてもらいます」と笑う彼へ「ここがキッチンとは都合がいい」と返せば、「まじ冗談」と彼は焦ったように声を発した。