数分、気まぐれに吹く風に髪を揺らし、増家は「あの木なんだっけ」と言い出した。彼の視線はブナへ向かっている。「ブナ」と答えれば、「なんかかっけえよな」と返ってきた。
「増家君、植物好きなんだっけ?」言いながら彼の顔を見れば、「お前ぶっ飛ばすぞ」と腕に拳を突き付けられた。僕は腕をさすりながら、攻撃を繰り返す増家へ「なんでなんで」と笑い返す。
「なんではこっちの台詞だ。なんでそんな中途半端に高い声で君付けなんだよ」
「名前では呼んだじゃん」
「普段のその声で増家って言われたかったんだよ。そんで、『おれ暇なんだけどよお』とか言ってくるような仲になりたかったんだよ」
「なんで一人称まで変えなきゃならない。一人称も二人称も、絶対要望には応じないからな」
「硬派だなあ」と増家は苦笑する。
「増家君、植物好きなんだっけ?」言いながら彼の顔を見れば、「お前ぶっ飛ばすぞ」と腕に拳を突き付けられた。僕は腕をさすりながら、攻撃を繰り返す増家へ「なんでなんで」と笑い返す。
「なんではこっちの台詞だ。なんでそんな中途半端に高い声で君付けなんだよ」
「名前では呼んだじゃん」
「普段のその声で増家って言われたかったんだよ。そんで、『おれ暇なんだけどよお』とか言ってくるような仲になりたかったんだよ」
「なんで一人称まで変えなきゃならない。一人称も二人称も、絶対要望には応じないからな」
「硬派だなあ」と増家は苦笑する。