増家ははあと息をついた。「しかしわからん。お前みたいな奴の考えることは本当にわからん」

 「そう?」

 「複雑なんだよ、考えることが。もっとシンプルに考えられんのか」

 「そうかなあ」

 「まあ、今のお前がハッピーならいいんだけどよ」

 「ハッピーねえ。まあアンハッピーではないけど」

 「まあ、白でもなく黒でもなく、灰色くらいがちょうどいいんだろうな。あんまり晴れてても暑いし、雨じゃあなんか気分落ち込むし、曇りくらいがちょうどいいかもしれん」

 「僕は嫌いじゃないけどね、雨」

 増家はぽかんとした顔で僕を見た。「……お前変わってんな」てか違うんだよと苦笑する。「普通の天気の話してんじゃねえんだよ」

 わかってるわかってると笑い返すと、増家はどっちの番かわかんなくなったじゃねえかと盤を見下ろした。