無難、平凡、普通。個性もおかしな部分もないこと、並、別段異なる性質を持っていないこと。みな、僕には対抗し難い敵のようなものだ。それらの言葉を持ち出されれば、僕は作られる段階でなんらかの異常が生じ、悪事を働く細胞のような存在になる。時には蔑まれ、時には恐れられる。周囲からそのような目を向けられる瞬間は、決まって、何気なくなにか発したときだった。何気なく言葉を発したとき、何気なく行動を起こしたとき。そういった瞬間にぼろが出るのだ。
彼女はふっと表情を和らげる。「ナオさんみたいな人にも、向いてないと感じることがあるんですね。もちろん、それに伴う苦難も。だもん、わたし程度の人じゃあ、後悔やら悩みやら、ちょっと多く感じられるくらいあってもおかしくないですね」
「……部活のことですか」
「……いえ。いや、まあ、それもなんですけど。なんか、いろいろ」
「なにかあった?」
「ふと、自分の現状を再確認する瞬間ってあるじゃないですか。それでなんか、置かれた現状は求めてたものでもないし、優れたものも持ってないしって思って。くだらないですけど、等身大で抱えてみると結構な存在感で」
「わかる……なんて、軽々しく言っていいものか疑問だけど、そんな気がする」
「嘘つき、なんて。言っちゃいけないんでしょうね」
「そんなことはないよ。こういう場面ではよく言われるから。一時期、よくこういう場面に遭遇したことがあってね。できるところでは提案や共感やとしてたんだけど、決まって『なにがわかるの』とか、『そんな人に言われても説得力ないよ』とか、まあことごとく惨敗してね」
惨敗、と笑う彼女へ、そうと同じように返す。
「悲しいことに、僕は多くの人がいる場所とは常に遥かな距離を置いているようでね。いつだってそこには、属すどころか、近づくことさえできないんだ。だから、君が今こうして、自分のことを話してくれるのは、すごく嬉しいんだ」
「でも、わたしだってナオさんのこと、同じように思ってますよ?」
「もういいんだ、普通にこうして話してくれる人がいれば。僕が今普通に接せる人は、家族を除けば君を含めても二人しかいない」
「寂しいですか?」
ううん、とかぶりを振るのに迷いはなかった。「そんなことはない。二人もいてくれれば充分だ。だけど、どちらか一人でも離れていくのは寂しい」
彼女は軽く握った手を口の前にやり、ふふっと笑う。変な奴だと思われただろうか。苦手なタイプだと思われただろうか。それならそれでいい。寂しさと離れ行く彼女を止めるのは同じではない。その場合には、悪足掻きはしない。
彼女はふっと表情を和らげる。「ナオさんみたいな人にも、向いてないと感じることがあるんですね。もちろん、それに伴う苦難も。だもん、わたし程度の人じゃあ、後悔やら悩みやら、ちょっと多く感じられるくらいあってもおかしくないですね」
「……部活のことですか」
「……いえ。いや、まあ、それもなんですけど。なんか、いろいろ」
「なにかあった?」
「ふと、自分の現状を再確認する瞬間ってあるじゃないですか。それでなんか、置かれた現状は求めてたものでもないし、優れたものも持ってないしって思って。くだらないですけど、等身大で抱えてみると結構な存在感で」
「わかる……なんて、軽々しく言っていいものか疑問だけど、そんな気がする」
「嘘つき、なんて。言っちゃいけないんでしょうね」
「そんなことはないよ。こういう場面ではよく言われるから。一時期、よくこういう場面に遭遇したことがあってね。できるところでは提案や共感やとしてたんだけど、決まって『なにがわかるの』とか、『そんな人に言われても説得力ないよ』とか、まあことごとく惨敗してね」
惨敗、と笑う彼女へ、そうと同じように返す。
「悲しいことに、僕は多くの人がいる場所とは常に遥かな距離を置いているようでね。いつだってそこには、属すどころか、近づくことさえできないんだ。だから、君が今こうして、自分のことを話してくれるのは、すごく嬉しいんだ」
「でも、わたしだってナオさんのこと、同じように思ってますよ?」
「もういいんだ、普通にこうして話してくれる人がいれば。僕が今普通に接せる人は、家族を除けば君を含めても二人しかいない」
「寂しいですか?」
ううん、とかぶりを振るのに迷いはなかった。「そんなことはない。二人もいてくれれば充分だ。だけど、どちらか一人でも離れていくのは寂しい」
彼女は軽く握った手を口の前にやり、ふふっと笑う。変な奴だと思われただろうか。苦手なタイプだと思われただろうか。それならそれでいい。寂しさと離れ行く彼女を止めるのは同じではない。その場合には、悪足掻きはしない。



