テレビを点けると、先日公開された映画の広告が流れた。ラスト十五分、あなたはきっと涙する――。影があるから光があるのか、光があるから影があるのか。影を消そうとすれば光も消え、影を消そうとすれば光が消える。どうにか光だけで飾る術はないものかと考える。


 夕食は、魚の塩焼きときんぴらごぼう、わかめと豆腐の味噌汁と白米だった。

 「そうだ」食事を始めてすぐ、母が言った。「帰ってきたときにちょうど、お母さんから荷物が届いたの。楓の好きなお菓子も入れておいたって、メールが来たわ」

 「そう、嬉しい」

 「また送るわねって書いてあった。お母さん、楓大好きだもんね」

 ふと、父が「今日の味噌汁うまい」と呟いた。「まあひどい」と母は言う。「いつだっておいしいでしょう?」と続ける彼女に、父は「うん」と短く返す。少しいい加減に返したようにも見える。

 きんぴらごぼうを口に入れ、ゆっくり咀嚼しながら、わたしは、わたしの好きなお菓子ってなんだろうと考えた。