白のティーシャツに、「和風カーディガン」の名目で売っている羽織のようなものを重ね、兄は手芸部員の女子と教室の外に出た。

 「うちの手芸部はすごいでしょ」と、彼女は得意げに言う。

 「商品は基本手芸部が作ったんだもんね」

 「まあ、岸根君の手先の器用さには驚いたけど。まりなんか作れるほどなのに、なんで手芸部入らなかったの?」

 「植物の方が好きだったから」

 へえ、と彼女は言う。「植物好きなんだ」
 
 「まあ」

 「植物部ってなにしてるの?」

 「植物についてひたすら調べて、部員同士で情報共有するのが主な活動かな」

 ふうん、と言う彼女の声は、少しつまらなそうだ。「意外と地味なんだね。部室で植物育てたりっていうこともしてるのかと」

 「それもしてるよ。花とか植木は部室のあちこちにある。一人一個二個、自分の植物もある」

 「そうなんだ」と、今度は明るく言う。「本当に植物が好きな人には楽しそうな部活だね」

 「手芸部は?」

 「え?」

 「なにしてるの?」

 「ただ、もの作ってるだけ。お裁縫とかビーズとか、装飾品を作ったりもする。あとは人造皮革――フェイクレザーだね、それでバッグとか小物入れ作ったり。みんな器用で、それなりの出来なんだよ。わたしなんか、部活で作ったものがお気に入りの私物の一つになってる」

 「それはすごい。そりゃあ、ちょっとした外套くらいお手の物だね」

 「外套……」ふふふと彼女は愉快そうに笑う。「外套って。古臭い言葉頻発する親戚のおばさんが言ってた。まさか同年代の人の口から聞くとは。しかも岸根君」

 「そんなにおかしいかな」

 「普通は上着とかじゃない? 羽織ものとか」

 「ああ……そうか。なにも考えず使っちゃった」

 「いや、いいんだけどね。むしろそういう人好きだし。なんか親近感みたいな感じで笑っちゃった」

 ふふふと、彼女はまた笑う。