僕は彼女を知っている。小学生時代からの、今となっては思い出のこの図書館に、彼女はここ数日、欠かさず訪れる。今日は濃いピンクのティーシャツに濃い青のジーンズという出で立ちで、セミロングの艶のある黒髪を後方の高い位置で一つに結っている。彼女は三冊の本を手に、僕の左前の席に着いた。本はそれぞれ、二十三年前に発行された、音楽家の女性が主人公のミステリーと、十五年前に発行された、しばらく昔の日本が舞台の、家族愛を描いたヒューマンドラマ、七年前に発行されたバーテンダーを目指す青年の半生を描いたヒューマンドラマの三作だ。いずれも作者も違い、共通点は見出せない。昨日までは植物が関する書籍を多く読んでいて、植物が好きな人なのだろうと想像していたが、それだけではないようだ。芸術では、音楽や愛といったものが好きなのだろうか。わからない。
ただ、僕は彼女について確かなことを知っている。彼女は魅力的な人だ。熱心で明るく、強く優しい人なのだ。
ただ、僕は彼女について確かなことを知っている。彼女は魅力的な人だ。熱心で明るく、強く優しい人なのだ。