休み時間や昼休みには友達と遊び、授業中には窓の外を覗いて雲や雨粒を追い、テストが返ってくれば赤ペンで刻まれた数字の大きさを友達と競い、体育の時間ではいかに指定された動きについていけるかで友達と競い、一斉下校の金曜日には、放課後、ゲームの成績で友達と競い。弟の小学校生活は、一割の友人との遊びと、九割の友人との競争でできていた。

 小学校生活もいよいよ終わるという頃には、兄の笑顔はすっかりないものになっていた。まるで、兄がもとよりあまり笑わない人間であったかのようだ。いや、それならまだよかった。兄の笑顔は、弟の脳裏に息苦しさを感じるほど、頑固にこびりついてしまっていた。弟はその息苦しさを振り払う術を探したが、見つかりはしなかった。兄が笑うことも、兄の笑みを忘れ去ることもできなかった。

 そのどんよりとした酸素が当然になりかけた頃、弟の願いは、兄が笑うことでも、兄の笑みを忘れることでもなくなっていた。弟はその日も、私室の天井を眺めながら願った。眠りたい――。