読み終えた本を、開いていない本のそばに置き、弟はダイニングテーブルを離れた。「お腹空かないの?」と言いながら、ローテーブルのそばのソファへ尻から飛び込んだ。ふんわりと自身を受け止めるソファに、弟はふうと息をつく。「兄ちゃん?」と兄を見やると、兄は「なに?」と声だけを返した。
「お腹空かないの?」と改めて問うと、「大丈夫」と返ってきて、弟はさらに兄のことが気になった。「脳みそって一番糖分使うんだって」と、今しがた小説で得た知識を話す。「あなたがなにを調べているのか存じないけれども、少しは休憩した方がいいんじゃなくて?」先ほど読んだ小説の主人公の妻の真似をして言った。実際にこんな言い回しがあったわけではないが、言いそうだなと思った。兄はなにも言わない。
「兄ちゃん、宿題終わった?」
「うん」
「すごい。おれは昨日終わらせた。ほぼ昨日だけでだぜ、上等だろ」
「そうだね」
「……なにも食べないの? おれ、ご飯炊くけど」
「じゃあ、少し」
わかったと答えて、弟は腰を上げ、キッチンへ入った。炊飯器の蓋を開け、中の窯へ密閉容器に入った米と、水を適量入れ、「炊飯」のボタンを押す。軽快な電子音で承知と答え、炊飯器は仕事に取り掛かる。
「お腹空かないの?」と改めて問うと、「大丈夫」と返ってきて、弟はさらに兄のことが気になった。「脳みそって一番糖分使うんだって」と、今しがた小説で得た知識を話す。「あなたがなにを調べているのか存じないけれども、少しは休憩した方がいいんじゃなくて?」先ほど読んだ小説の主人公の妻の真似をして言った。実際にこんな言い回しがあったわけではないが、言いそうだなと思った。兄はなにも言わない。
「兄ちゃん、宿題終わった?」
「うん」
「すごい。おれは昨日終わらせた。ほぼ昨日だけでだぜ、上等だろ」
「そうだね」
「……なにも食べないの? おれ、ご飯炊くけど」
「じゃあ、少し」
わかったと答えて、弟は腰を上げ、キッチンへ入った。炊飯器の蓋を開け、中の窯へ密閉容器に入った米と、水を適量入れ、「炊飯」のボタンを押す。軽快な電子音で承知と答え、炊飯器は仕事に取り掛かる。