「お待たせ」と、ナオさんは隣に座った。木製のお盆に載った冷茶グラスは、縁側に下ろされると藺草のコースターに載せられた。続いて、純白の皿に載った淡い黄色の長方形が置かれた。色の薄い木製の黒文字が添えられている。
「グレープフルーツの羊羹。近くの和菓子屋さんの、夏季限定の商品なんだ」
「そんなものいいんですか?」
「まだあるから」おいしいからぜひ、と言うナオさんへ、わたしは「いただきます」と頭を下げる。グラスを手に取り、そっと茶を啜る。濃いめのそれはまったりとした苦みと喉を通った。
「おいしい」
「羊羹がほどよく甘いから、少し濃いめに淹れたんだ」
「ありがとうございます」
ナオさんは、無色の液体が入ったグラスのそばにあった黒い皿から、おかきを一つつまんで口に入れる。それは物騒なほど赤く、心なしか辛いにおいがしないでもない。
「辛いやつですか?」と尋ねると、彼は「好きなんだ」と言う。「もう少し辛くてもいいんだけどね」と言う彼へ、「大丈夫ですか」と苦笑する。健康も、感覚も、だ。
「中学生の頃、同級生にも言われた。『味覚バグってんの?』って」
「そりゃ言いますよ、物騒な色してますもん、それ」
ナオさんは少し考えるように沈黙を作ると、「一つ食べる?」とそれを破った。「お気持ちだけ」とわたしは苦笑する。
「グレープフルーツの羊羹。近くの和菓子屋さんの、夏季限定の商品なんだ」
「そんなものいいんですか?」
「まだあるから」おいしいからぜひ、と言うナオさんへ、わたしは「いただきます」と頭を下げる。グラスを手に取り、そっと茶を啜る。濃いめのそれはまったりとした苦みと喉を通った。
「おいしい」
「羊羹がほどよく甘いから、少し濃いめに淹れたんだ」
「ありがとうございます」
ナオさんは、無色の液体が入ったグラスのそばにあった黒い皿から、おかきを一つつまんで口に入れる。それは物騒なほど赤く、心なしか辛いにおいがしないでもない。
「辛いやつですか?」と尋ねると、彼は「好きなんだ」と言う。「もう少し辛くてもいいんだけどね」と言う彼へ、「大丈夫ですか」と苦笑する。健康も、感覚も、だ。
「中学生の頃、同級生にも言われた。『味覚バグってんの?』って」
「そりゃ言いますよ、物騒な色してますもん、それ」
ナオさんは少し考えるように沈黙を作ると、「一つ食べる?」とそれを破った。「お気持ちだけ」とわたしは苦笑する。