トーストとミルクティーで朝食を済ませた。洗面所には弟がおり、「服濡れた」と鏡越しに苦笑する。

 「この間もやってたね」と笑い返すと、鏡の中の彼は、一瞬穏やかに微笑んだ後、恥ずかし気な笑みを浮かべた。

 「今日、朝食なに?」

 「パン。好きに食べて」

 「兄ちゃんは?」

 「バタートーストとミルクティー」

 「ふうん。じゃあママレードと無糖紅茶かな」

 「“じゃあ”?」

 「兄ちゃんは甘くしたんでしょ? だからおれはすっきりいただく」

 「そう。まあ、ご自由に」

 弟は洗面台の上で手の水滴を払い、残った水気をタオルで吹いた。「じゃあ行くかな」と伸びをして、彼は洗面所を出ていく。

 濡れた洗面台に水栓を捻り、口をゆすいで、歯ブラシの上でチューブを圧す。歯ブラシを咥えて水を止める。