・【ホームルーム】


 次の日、学校へ来ても僕とトールと博士はあまり会話をしなかった。
 昨日のことが衝撃的すぎて、正直日常を生きる気にはなれなかった。
 どうしよう、誰かに話したほうがいいのかな、そんなことを、心臓をドキュドキュいわせながら考えていると、担任の先生が、
「突然ですが、転校生が来ています! 私が昨日みんなに連絡するの忘れていました! それではどうぞ!」
 何だよその微妙なドジと思いながら、開いた扉のほうを見ると、そこには!
「「「イッチン!」」」
 僕とトールと博士が叫んだ。
 普段、教室では物静かな三人で通ってる僕たちが叫んだ。
 しかしそこには確かにイッチンが立っていて、
「あっ、今叫んだ三人とは昨日、学校探検体験してる時に会った友達や!」
 と言いながらそれぞれのほうを見て手を振った。
 そして
「岩橋のおっちゃん……じゃなくて、親戚の校長先生から紹介されてこの中学校に来ました! よろしくやで!」
 見知らぬ同学年の生徒。
 調理室の場所を知らない。
 悪意に満ちた表情は校長室に隠れるイタズラを思いついたから?
 校長先生の沈黙は、校長室の机の下に隠れて黙っててと指示をイッチンが出していて、それに困惑していたから?
 そしてあの最後に聞こえた笑い声は普通にイッチンの笑い声……。
 僕たちの男子だけのラブコメ部の歯車が、回り出したような気がしたんだ。

(了)