・
・【調理室】
・
ルンルンといった感じでスキップしながら歩くイッチンと、あと博士とトールも。結果僕以外。
いやでも僕は気付いているぞ、イッチンの危険性を。
この女子は危ない女子だ! いわゆるサークルクラッシャーかもしれない!
イッチンが調理室に行きたいと言ったので、今はトールが先導して、スキップして移動している。
でも、ふとここで違和感を抱いた。
調理室に行きたい、って何?
何でまだ調理室の場所も覚えていないの?
そりゃ中学一年生のうちはまだ調理実習も無いから、単純に忘れているのかもしれないけども、忘れることってある?
そして時折脳裏をかすめる謎の記憶、もしかしたらイッチンはサークルクラッシャーよりも何かおぞましい存在なのかもしれない、とか、何か本当に漫画みたいなことを考えていると、調理室に着いた。
調理室は話によると、二年前に新しくしたらしく、まだまだピカピカで、さらにはIHにもガスにも対応といったすごいところだ。
新しくしたことによって、場所も新しく増築したらしく、普通の部屋よりもデカい。
冷蔵庫も業務用の大きな冷蔵庫が置いてある。
噂によると、残業の先生たちが夜な夜な夜食を作っている、らしい。
でもその噂もどうやら本当のようで、冷蔵庫の中にはいろんな食材が入っていた。
まあ噂というか実際運動部とか、夜遅くまで残っている生徒も夜食を食べているらしいんだけども。
「何か使ってもええわな、少しくらい」
そう言ってイッチンは生クリームを取り出した。
甘党の先生もいるんだな、とか思いながらイッチンの行動を見ていると、早速その生クリームを棚から探し出したボウルに入れて、同じく探し出した泡立て器で、かき混ぜて、泡立て始めた。
いや
「イッチン、そんな生クリームを作ってどうするの?」
「いややっぱりラブコメと言えば、生クリームまみれになるヒロインやん。そういうのがエロくて、ええんやろ?」
いやいや
「イッチンのラブコメ、ずっとちょっと対象年齢が上なんだって。生クリームとかそういうのダメだから」
と言ったところで博士が割って入り、
「いや、生クリームまみれの、ヒロインは、憧れ、だ」
さらにトールも鼻息を荒上げながら、
「確かにっ! それはアリだなっ! それはやろうっ!」
いや……ラブコメ部が若干変態部に近付いていってるよ……こっちはさわやかなラブコメ部なのに。
というか
「生クリームでべちゃべちゃになっちゃダメだからね、食べ物がもったいないからね」
するとイッチンが、
「分かっとるって! というか顔に生クリームが付けばええんやろ! それを三人で舐めてとればええやん!」
その言葉に一気に心音の高鳴りを感じた僕たち。
三人で、舐めるって、いやもう、それは、対象年齢上すぎるでしょ……と思ったところで、
「まあそれは冗談やけどな、さすがに舐められたらもうラブコメちゃうわ」
と言ったので、何かめちゃくちゃ博士が激しくズッコけたので、
「博士っ!」
とトールがちょっと焦った。
というか僕も焦った。
まさかいつも冷静沈着な博士がここまで盛り上がっているなんて!
博士、徐々に壊れていっていないか? 心配だ……と思っていると、トールがイッチンに近付き、
「というかっ、こういう力仕事は俺に任せろっ」
そう言って泡立てを激しくし始めた。
男らしいけども、やりたいことがあれだからなぁ……と思いながらトールを見ていると、イッチンがまた冷蔵庫のほうに近付いたので、そっちを見ると、
「わっ、普通に冷凍食品あるやん、じゃあちょっとだけチンさせてもらうわ」
と言って、焼きおにぎりをチンし始めた。
単純にお腹もすいているのかな、とか思った。
トールの泡立てが終わると、イッチンがトールに近付いてきて、ひょいっと指で生クリームを鼻につけた。
「ほら、可愛いやろぉ」
そう言って微笑んだイッチン。
いやまあ普通に可愛いけども、と思ったその時、トールが何か気合いを入れたと思ったら、
「ホントっ、イッチンはドジだなっ、でも可愛いなっ」
と言って笑った。
あっ! ラブコメっぽいと思った刹那、
「ピーーッ」
博士のポイントのホイッスルが鳴った。
その一連の流れにイッチンが大笑いして、
「ホンマおもろいわぁ、ラブコメ部ってぇ、ずっと一緒にいたいわぁ」
ずっと一緒にいたい、そんなこと言われるとやっぱり嬉しいけども、何かちょっと違和感が。
同じ学年ならもう既にずっと一緒にいるんじゃないの?
まるで今はいないみたいな感じがして。
それとも同じクラスじゃないからという意味かな? う~ん……?
と思ったところで博士が、
「じゃあ、口元に、ちょっと、垂れるように、生クリーム、つけて、ください」
いや!
「そういうマジのエロティック禁止だって! ラブコメ部でしょ!」
と僕が激しくツッコむと、イッチンが僕のほうを向きながら、
「というか生クリームが比喩ってこと理央は可愛いくせに分かっとるんやなぁ、えぇ、えっちすぎひん?」
またえっちって言われた! 何かもう最高だ!
……じゃなくて!
「そういうイッチンだって分かってるってことじゃないか!」
と返すと、イッチンは少し頬を赤らめながら、
「そういう攻めはちゃうやん……」
恥ずかしそうに俯いたので、何かもう訳分からないくらい興奮した。
結局生クリームは砂糖を入れて、みんなでモグモグ食べた。
そう言えば、イッチンはあの焼きおにぎり食べたのかな?
途中からトールの泡立てる動作がやけにダイナミックに、ショーアップされてきて、そっちを見ちゃったけども。
・【調理室】
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ルンルンといった感じでスキップしながら歩くイッチンと、あと博士とトールも。結果僕以外。
いやでも僕は気付いているぞ、イッチンの危険性を。
この女子は危ない女子だ! いわゆるサークルクラッシャーかもしれない!
イッチンが調理室に行きたいと言ったので、今はトールが先導して、スキップして移動している。
でも、ふとここで違和感を抱いた。
調理室に行きたい、って何?
何でまだ調理室の場所も覚えていないの?
そりゃ中学一年生のうちはまだ調理実習も無いから、単純に忘れているのかもしれないけども、忘れることってある?
そして時折脳裏をかすめる謎の記憶、もしかしたらイッチンはサークルクラッシャーよりも何かおぞましい存在なのかもしれない、とか、何か本当に漫画みたいなことを考えていると、調理室に着いた。
調理室は話によると、二年前に新しくしたらしく、まだまだピカピカで、さらにはIHにもガスにも対応といったすごいところだ。
新しくしたことによって、場所も新しく増築したらしく、普通の部屋よりもデカい。
冷蔵庫も業務用の大きな冷蔵庫が置いてある。
噂によると、残業の先生たちが夜な夜な夜食を作っている、らしい。
でもその噂もどうやら本当のようで、冷蔵庫の中にはいろんな食材が入っていた。
まあ噂というか実際運動部とか、夜遅くまで残っている生徒も夜食を食べているらしいんだけども。
「何か使ってもええわな、少しくらい」
そう言ってイッチンは生クリームを取り出した。
甘党の先生もいるんだな、とか思いながらイッチンの行動を見ていると、早速その生クリームを棚から探し出したボウルに入れて、同じく探し出した泡立て器で、かき混ぜて、泡立て始めた。
いや
「イッチン、そんな生クリームを作ってどうするの?」
「いややっぱりラブコメと言えば、生クリームまみれになるヒロインやん。そういうのがエロくて、ええんやろ?」
いやいや
「イッチンのラブコメ、ずっとちょっと対象年齢が上なんだって。生クリームとかそういうのダメだから」
と言ったところで博士が割って入り、
「いや、生クリームまみれの、ヒロインは、憧れ、だ」
さらにトールも鼻息を荒上げながら、
「確かにっ! それはアリだなっ! それはやろうっ!」
いや……ラブコメ部が若干変態部に近付いていってるよ……こっちはさわやかなラブコメ部なのに。
というか
「生クリームでべちゃべちゃになっちゃダメだからね、食べ物がもったいないからね」
するとイッチンが、
「分かっとるって! というか顔に生クリームが付けばええんやろ! それを三人で舐めてとればええやん!」
その言葉に一気に心音の高鳴りを感じた僕たち。
三人で、舐めるって、いやもう、それは、対象年齢上すぎるでしょ……と思ったところで、
「まあそれは冗談やけどな、さすがに舐められたらもうラブコメちゃうわ」
と言ったので、何かめちゃくちゃ博士が激しくズッコけたので、
「博士っ!」
とトールがちょっと焦った。
というか僕も焦った。
まさかいつも冷静沈着な博士がここまで盛り上がっているなんて!
博士、徐々に壊れていっていないか? 心配だ……と思っていると、トールがイッチンに近付き、
「というかっ、こういう力仕事は俺に任せろっ」
そう言って泡立てを激しくし始めた。
男らしいけども、やりたいことがあれだからなぁ……と思いながらトールを見ていると、イッチンがまた冷蔵庫のほうに近付いたので、そっちを見ると、
「わっ、普通に冷凍食品あるやん、じゃあちょっとだけチンさせてもらうわ」
と言って、焼きおにぎりをチンし始めた。
単純にお腹もすいているのかな、とか思った。
トールの泡立てが終わると、イッチンがトールに近付いてきて、ひょいっと指で生クリームを鼻につけた。
「ほら、可愛いやろぉ」
そう言って微笑んだイッチン。
いやまあ普通に可愛いけども、と思ったその時、トールが何か気合いを入れたと思ったら、
「ホントっ、イッチンはドジだなっ、でも可愛いなっ」
と言って笑った。
あっ! ラブコメっぽいと思った刹那、
「ピーーッ」
博士のポイントのホイッスルが鳴った。
その一連の流れにイッチンが大笑いして、
「ホンマおもろいわぁ、ラブコメ部ってぇ、ずっと一緒にいたいわぁ」
ずっと一緒にいたい、そんなこと言われるとやっぱり嬉しいけども、何かちょっと違和感が。
同じ学年ならもう既にずっと一緒にいるんじゃないの?
まるで今はいないみたいな感じがして。
それとも同じクラスじゃないからという意味かな? う~ん……?
と思ったところで博士が、
「じゃあ、口元に、ちょっと、垂れるように、生クリーム、つけて、ください」
いや!
「そういうマジのエロティック禁止だって! ラブコメ部でしょ!」
と僕が激しくツッコむと、イッチンが僕のほうを向きながら、
「というか生クリームが比喩ってこと理央は可愛いくせに分かっとるんやなぁ、えぇ、えっちすぎひん?」
またえっちって言われた! 何かもう最高だ!
……じゃなくて!
「そういうイッチンだって分かってるってことじゃないか!」
と返すと、イッチンは少し頬を赤らめながら、
「そういう攻めはちゃうやん……」
恥ずかしそうに俯いたので、何かもう訳分からないくらい興奮した。
結局生クリームは砂糖を入れて、みんなでモグモグ食べた。
そう言えば、イッチンはあの焼きおにぎり食べたのかな?
途中からトールの泡立てる動作がやけにダイナミックに、ショーアップされてきて、そっちを見ちゃったけども。