「私という存在は、全力で愛情を注がれなければ消えてしまうの。私だけじゃない、二次元の世界にいる子達はみんなそう。次から次へと出てくる新キャラクターに飲み込まれそうになっても、一途に愛してくれる人がいれば、ずっと記憶の中に留まっていられるから。でも、新しいアニメを観ているときに他に気になるキャラが出てきたら? 視聴者はそのキャラに夢中になるでしょう? そして古い私達は忘れられてしまうの。そうやって、アニメ文化は成長してきたの」

「違う! 他に新しく魅力的な子が出てきたとしても、少なくとも俺は、ずっとカナたんを愛し続けるよ!」

 俺の言ったことが耳に入らないのだろうか。カナたんはどんどん話を進めていった。

「直哉くんを責めるつもりは全然ないの。あなたは私とは違う、三次元の女の子に恋をした。あなた達の世界ではそれが普通なの。だから、夢の時間はここまで。ありがとう、愛してくれて。幸せだったよ。さよなら……」

 さよならと聞いた瞬間、体が先に動いて消えかかっていた彼女を抱きしめた。この世界で初めて触れた彼女の抱き心地は、抱き枕とは全く異なったものだった。温かくはないが、柔らかく、思っていたよりも腰が細かった。