――目が覚めると、真っ白な世界の中に立っていた。

 そこは上下左右の全面が光で満ちているのに、決して眩しくはなかった。ただ頬に感じる風が心地良くて優しい場所だなと思った。

 誰に言われたわけでもないけれど、誰かに会わなきゃいけない、何かをしなくちゃいけない気がした。ひたすら前に歩を進めていくと、人影が見えた。まだぼんやりとしたシルエットしかわからない状態であっても、俺はそれが誰であるのか確信が持てた。

 そしてはっきりと彼女が見える距離まで近づいてから、愛しい人の名前を呼んだ。

「会いたかったよ……カナたん」

 毎日愛を捧げてきた彼女が今、俺の目の前で微笑んでいた。

 カナたんに促されるまま、俺は彼女が所属している文芸部に足を踏み入れた。何もない場所から急に部室が出てきた理由については、考えないでおこう。「それは夢だから」と言ってしまうのは簡単だが、俺は絶対に認めたくないのだ。

 これは夢ではない。ずっとカナたんを思い続けてきた俺は、ついに二次元の世界に入ることに成功したに違いない。そう考えると話したいことはたくさんあるはずなのに、何から話せばいいのかわからなくなってきた。

「カナたんって公式ではFカップだけど、胸が大きいと可愛いブラが少ないって本当?」

 やっと口にできた言葉はセクハラでしかなかった。