カナたんに夢中になって以降、国立大学の推薦は確実に貰えるだろうと言われていた俺の成績は急降下、折れ線グラフにしたら綺麗な直線が引けるくらいにガタ落ちした。

 よって高校三年生の現在、そろそろ進路が決まっていなければならない六月のこの時期になっても将来のビジョンが見えず、親や先生達の頭を悩ませていた。

 今日も呼び出されていた進路指導室を出ると、頼んでもいない身元引受人が両手を組んで偉そうに待っていた。

「ここは三つ指ついて、『おかえりなさいご主人様』って可愛く出迎える場面じゃないの?」

「なんで私がこの状況で直哉のことを優しく出迎えなきゃならないのよ! ってか、べ、別に待ってた訳じゃないから!」

 いや、他の生徒はとっくに下校時間を回っているからいないんだけど。こいつ、地でツンデレ発言してやがる。これがカナたんだったら萌えるんだけど、咲良はないわ……と俺はげんなりした。

 吉沢咲良。家が近所で同い年、幼稚園からずっと学校が一緒で、世間は咲良に幼馴染というキャラ付けをしてくる。その響きに萌え要素を感じる人もいるだろうが、俺はこいつに恋愛感情を抱いたことはないし、逆に抱かれたこともない。