次の日の放課後。俺は咲良を屋上に呼び出した。

 勢いよく屋上の扉を開くと、呼び出した俺よりも早くあいつは待っていた。

「この前の返事、なんだけど……」

「う、うん……」

「咲良……カナたん……」

「え?」

 咲良が一瞬、いつものアホ面でクレスチョンマークを浮かべた気がするけれど、それなりに緊張している俺に奴を気にかける余裕はない。俺は俺の想いを伝えるだけだ。

 思いっきり息を吸って、叫んだ。

「お前達は二人とも、俺の嫁だー!」

 放課後の夕空に声が響き、俺は清清しい気持ちで空を見上げた。実に心地よい風だ。だけど、どうして咲良は固まっているのだろう?

「……それ、本気の返事なの……? それ二股ってことじゃ……?」

「うん。でも、三次元の女の子だったら、咲良が一番好きだよ」

 それだけ伝えると、俺も本格的に咲良を直視できなくなって、そっぽを向いてしまった。

「あ……あんた今、なんて……も、もう一回言って!」

「また、いつかね。一緒にいれば、聞く機会なんてたくさんあるよ」

 俺と咲良と、そしてカナたん。自分勝手かもしれないが、俺はしばらく、いや、ずっとこの三人で一緒にいるつもりだ。だから今は、この返事でいいと思う。

「ほら、カナたんも家で待ってることだし早く帰ろう。今日は咲良に時間をかけた分、家ではたくさんカナたんのことを愛さないと!」

 歩きだした俺の後を、ぶつぶつ言いながら咲良が追いかけてくる。

 こんな付き合いは変だと、誰かが俺たちを指差して非難するのかもしれない。だけど誰が何を言おうとも俺は肯定する。あの白い世界で二人きり、俺とカナたんと二人で辿り着いた答えに間違いなんてあるわけがないのだ。

 ね、カナたん? (了)