『……何の用だ』

 うげ、と思いつつも用件を訊ねる。

『遊ぼう!』

 鼓膜を破る勢いでそう迫られた。

『夏休みの間は邪魔をしないって約束だろ』
『うん、大丈夫だよ。邪魔をするわけではないから!』
『結果としてテニスができなきゃ全部邪魔だ』

 俺の言葉を受けた冬木は詐欺師のような怪しげな笑い声をあげた。

『ふっふっふ、そう言うと思って既にテニスコートを予約しておきました』
『何……? どういうつもりだ』
『私とテニスで勝負だ!』

 こいつ、本気で言っているのか。

『お前テニスできるのか?』
『当然! これでもマネージャーだよ。さあ返答は!?』
『よし、相手になってやる』

 これは驚いた、あの冬木が積極的に俺をテニスに駆り出そうとするとは。奴の実力はさておき、ラケットを振れるのなら断る理由はない。

『それじゃあお昼に駅前ね!』
『わかった』

 電話を切ると、俺はすぐに準備を始めた。
 日頃の恨みだ、覚悟しろ、ボコボコにしてやるからな。