「ただし、夏休み中に一回でも俺の練習を邪魔したらこの話は無しだ。いいな?」
「うぐっ」

 魔物の呻き声のような、とてつもなく嫌そうな声が聞こえてきた。
 やっぱりだ、この反応は邪魔する気だったという態度だ。

 冬木の妨害が意図的なものであるのは何となく察していたが、今の反応で完全に疑惑が確信へと変わった。それを悟ったのか、冬木も「しまった」といった表情をしている。

 どうやらこれは英断だったようだ。冬木の要求を突っぱねて夏休み中ずっと邪魔をされるよりかは、最終日に一日だけ冬木に時間を割いた方がずっといい。

「それじゃ、八月三十一日の夕方に駅前集合な」

 冬木やみなみに口を挟ませることなく会話を締める。
 こうして、慌ただしい一学期が幕を閉じた。