――七月十日(金)

 月日が流れるのはあっという間だ。
 気がつけば六月は終わり、七月頭のテストさえも既に終わりを迎えていた。その間、特にこれといって変わったことは起こらなかった。

 冬木もみなみもいつも通り。そして、唐突に起こるあの頭痛もこれまで通り続いている。あれから何度か病院に行きもしたものの、やはり原因は不明。完全にお手上げだ。

 しかし最近は慣れてきたのか、あるいは生活に支障をきたす程ではないからなのか、俺自身もあまり気にしないようになっていた。

 気にしていたのは主にテニスのこととテストのこと。前者は相変わらず雨や冬木の妨害で上手くいっていない。
 後者については、今回は難なくクリアすることができた。冬木が得意げに言い放った「勉強会をしよう!」という提案に乗ったからだ。もちろん参加したのは渋々で、雨で練習ができなかったからというのが大きい。

 ともあれ、この俺が全教科五十点台をとれたのは奇跡と言える。

「また借りができたな」
「ふふふ、これはお礼に頭を撫で――」
「却下」

 屋上前でそんな会話を交わす。もはやお決まりのやり取りだ。

「あ、そうだ!」

 しかし何かを閃いたのか、冬木の表情がいつにも増して明るくなった。

「なんだ?」
「三人で今年の夏祭りに行こうよ! それがテストのお礼ってことで!」
「祭りって、夏休み最終日のか?」

 訊ねると、風切り音がするのではないかという速度で冬木が何度も頷いた。
 あの祭りならば俺も経験がある。花火大会にも引けを取らない規模の花火で締めくくられるラストは毎年多くの人々を魅了している。無論俺も例外ではなく、暇があれば毎年会場をぶらついている程だ。