その後も冬木のわがままに俺は付き合い続けた。
 来客が少ないのをいいことに、人目を気にすることなく子供向けコーナーを散策したのは正直なところ新鮮な感覚だった。

 幼い頃は広大に感じたというのに、体が大きくなった今ではとても窮屈だ。その変化が面白くて最後には「次に行こうよ」という冬木を俺が制止してまで居座ってしまった。

 冷静になってみれば何をはしゃいでいたのだと恥ずかしくなってくる。童心に帰るというのはもしかするとこういうことを言うのかもしれない。

「いやー、もうすぐ夕暮れだね」
「だな」

 時間が過ぎるのはあっという間だ。
 遊園地を出る頃には遠くの空が赤く染まり始めていた。じきに日が暮れる、今日はもう潮時だろう。

「家まで送っていくわ。駅から近いんだろ?」
「ほんと? ありがと!」

 道すがら、他愛もない話をした。といっても話すのは主に冬木で、俺は意味の分からない話をただ聞かされるばかり。

 話自体は退屈だったのに、俺も毒されてしまったのか楽しそうに話す冬木を見ているとこういうのも悪くないと思えてしまう。