「それで、行くのか? 行かないのか?」
「行きたいけど、どこに行くの?」
「うーん」

 迷うように唸ったものの、頭の中では既に行先は絞り込まれていた。というより、お世辞にも都会とは言えないこのあたりではそもそも迷えるほどの選択肢がないというのが正しいのかもしれない。

「……遊園地なんてどうだ?」
「誠さーん! 今雨降ってますよー!」
「あ、雨でも楽しめるだろ! お化け屋敷とか観覧車とか!」

 それとも行かないのか?と挑発するように首を傾けると冬木はすぐに「行く!」と食いついてきた。ちょろい。

「よし! さっさく行こう!」

 腕を突き上げ陽気にはしゃぐ冬木とともに遊園地へと向かう。以前みなみたちと三人で訪れたショッピングモール近くに位置するその遊園地は都会のそれと比べるとやや規模や華やかさに欠ける。しかしながら暇を潰すだけなら充分とも言える。

 奇跡的なことに、あれほど地面を叩きつけていた雨は勢いを弱め、遊園地に着くころにはぴたりと止まっていた。

 これはしめたものだと、俺たちは受付でさっさと入園料を払い、虹をモチーフにした半円形のゲートをくぐった。入園料金二千五百円、俺のお小遣い換算にして五か月分の出費は痛かったが今回ばかりは目を瞑ろう。