「あ、今『俺には関係ないな』とか思ったでしょ」
いや、思ってない。まあ思う直前ではあったけど。
「ダメだよそういうの。どれだけ練習しても事故にあったら全部無駄になっちゃうんだからね。明日は我が身ってやつだよ」
そう言って、ぎゅっと、肩を揉む力が強まった。もはや握られているのではないかという力強さだ。
「わかった、わかったから。そんなに強く揉むな、痛い」
「あ、ごめんごめん」
慌てて手を離し、逃げるように窓際へ駆けていく冬木をしり目に、俺は心の中で小さく息をつく。背もたれに体を預けて力なく上を見上げると、薄暗い教室を励ますべく必死に振る舞う蛍光灯が目に入った。
そんな教室の片隅で、俺はひとつの不安に襲われた。
俺は、本当に県大会で優勝できるのだろうか。
母さんとの約束を思うと胸が苦しくなる。俺にはもう時間がないのだ。
友人も恋人も、テニス以外の全てを捨てる覚悟で俺は日々を過ごしている。だというのに、気が付けばいつも隣には冬木がいる。俺からテニスの時間を奪っていく。
しかし、だからといって練習ができないことを冬木のせいにするつもりはない。
俺自身、本当は気が付いているのだ、心の底では自分が冬木千歳という人間を許容していることに。
いや、思ってない。まあ思う直前ではあったけど。
「ダメだよそういうの。どれだけ練習しても事故にあったら全部無駄になっちゃうんだからね。明日は我が身ってやつだよ」
そう言って、ぎゅっと、肩を揉む力が強まった。もはや握られているのではないかという力強さだ。
「わかった、わかったから。そんなに強く揉むな、痛い」
「あ、ごめんごめん」
慌てて手を離し、逃げるように窓際へ駆けていく冬木をしり目に、俺は心の中で小さく息をつく。背もたれに体を預けて力なく上を見上げると、薄暗い教室を励ますべく必死に振る舞う蛍光灯が目に入った。
そんな教室の片隅で、俺はひとつの不安に襲われた。
俺は、本当に県大会で優勝できるのだろうか。
母さんとの約束を思うと胸が苦しくなる。俺にはもう時間がないのだ。
友人も恋人も、テニス以外の全てを捨てる覚悟で俺は日々を過ごしている。だというのに、気が付けばいつも隣には冬木がいる。俺からテニスの時間を奪っていく。
しかし、だからといって練習ができないことを冬木のせいにするつもりはない。
俺自身、本当は気が付いているのだ、心の底では自分が冬木千歳という人間を許容していることに。