――六月三日(水)

「中間テストお疲れ様ー! そしておめでとう誠くん!」

 いつにも増してうるさい冬木が、屋上前の階段で飛び跳ねた。座っている俺とみなみの間でくねくねと身をよじり器用に踊っている。まるでチンアナゴみたいだ。

 そのお気楽な様子には心底呆れさせられるが、かくいう俺もその実、冬木同様小躍りしたいくらいの気持ちではあった。

「あー、マジでどうなるかと思った」

 テストが終わって一週間、返却された答案用紙を見て胸をなでおろす。
全科目ギリギリで赤点回避。あと一点でも落とせば追試を食らう、という科目がほとんどだった。

 とても胸を張れるような点数ではない。が、セーフなものはセーフなのだ。ひとまずはこれでいいとしよう。

「これも千歳ちゃんのおかげだね、感謝しなよ」

 購買で買ったパンを片手にみなみからの横やりが入る。

「してるって」

 言われなくとも感謝くらいしている。冬木のおかげで赤点を免れ、晴れて部活動に打ち込むことができるのだから。もっとも、俺を部活中止の危機に陥れたのも冬木なのだが。

「それにしても、すげえな」

 俺は返却された答案用紙とは別の、テスト前に冬木から渡されていた紙に目を移す。