たとえ、僕が永遠に君を忘れても

『よくわかったな、さすがだ』
『でっしょー! だからね、助けてあげようと思って』
『……と言うと?』
『勉強、教えてあげるよ!』

 なんだこいつ、もしかして天使の生まれ変わりじゃないだろうな。
 冬木千歳……なんて良い奴なんだ。

『まじか。めっちゃ助かる』
『でしょでしょ。というわけで明日と明後日はみなみちゃんも誘って勉強会ということで! ちょうど土日だしね!』
『待ってくれ、明日からやるのか? まだテストまで三週間くらいあるぞ。せめてテスト期間に入ってからでも……』

 些細な抵抗をすると、一瞬だけ沈黙が訪れた。
 俺を説得するための策を考えているのだろう。

『……誠くん、学力テストの結果を言ってみなさい。大声で! 隣家のみなみちゃんに聞こえるくらいの大声で!』
『ぐっ』

 策を考えた甲斐か、とんでもない威力の攻撃が飛んできた。
 国語は二十八点でした! 英語は七点でした!
 そんなこと言えるわけがない、みなみに殺される。

『さて誠さん、果たしてテスト週間から始めて間に合うと思いますか?』
『……思いません』

 何故か敬語で訊いてきた。怖い。

『早速明日から勉強会を行います。いいですね?』
『……はい』

 もはや頷くしかなかった。

『よし! じゃあ明日駅前に集合ね! みなみちゃんはもう誘ってあるから!』
『わかった……』
『いやー、それにしても赤点とったら部活できないなんて、大変なことになっちゃったね』

 まさしくその通りだ。おかげでまたテニスをやる時間が減りそうでこちらはずっと頭を抱えている。もうずっとため息ばかりだをついているところだ。

『まあ顧問の先生にその提案したの私なんだけどね~。それじゃあまた明日!』
『おい、ちょっと待て』

 ……くそ、切りやがった。
 こいつ今とんでもなく非道なことをさらっと口にしたぞ。

 何が勉強を教える、だ。全部あいつのせいじゃねえか!
 一瞬でも感謝してしまった自分が憎い。

 あいつは悪魔の生まれ変わりなんじゃないだろうか。
 冬木千歳……なんて悪い奴なんだ。