「ふふ」

 あまりの変化ぶりに動揺する俺とみなみ。
 そんな俺たちを差し置き、女の子はますます楽しげに笑い、今度は逆に周囲の音を打ち消す程の声を発した。

「全然大丈夫! ちょっとびっくりしちゃっただけ! これから三年間よろしくね!」

 大人しそうな第一印象とは真逆の明るさに、つい言葉を失った。
 あっけにとられて何も言えずにいると女の子は意気揚々と鼻歌交じりに体育館へと走り去っていく。
 俺とみなみはただ呆然とそのご機嫌な後ろ姿を眺めるだけだった。

 なんなんだ、あの子。見かけによらず意外と元気な子なのか。
 というか、よろしくされても困るのだが。

 実のところ、俺はこの学校で友人という友人を作るつもりはない。
 決して人との関わりを欲していないわけではないのだが、俺には他者との交流を蔑ろにしてでもやらなければいけないことがあるのだ。
 残念ながら、俺があの子と親しくなる日は来ないだろう。

「とりあえず……俺たちも体育館いくか」
「えと、うん。そうだね」

 やや困惑が残りつつも、程なくして俺たちも体育館へと足を運んだ。