って、前にもこんな会話をしたような気がするな。いつだったか。

「誠くん?」

 記憶を辿っていると、隣に座っていた冬木が顔を覗き込んできた。

「いや、何でもない。なんか前にも似た会話を――っ」

 ずき、と唐突に疼いたこめかみに気を取られて言葉が途切れる。
 また頭痛だ。今朝ほどの痛みではないが、こうも連続で起きると不安になってくる。

「……悪い、何の話だっけ」

 痛みのせいか、話の内容が思い出せない。
 今朝もこの頭痛のせいで記憶が曖昧になっていた。数時間が経った今となっては何を忘れたかさえも忘れてしまった。

「あはは、なにそれ。誠、認知症にでもなったの?」

 こめかみを抑えながら呆けたことを言う俺が面白かったのか、みなみが笑いながら茶々を入れてくる。

「なってないわ。……って、どうした冬木?」

 ふと冬木の表情が目に留まった。
 それは初めて会った時に冬木が見せた、時が止まったような、驚いたような表情。

「千歳ちゃん?」

 俺とみなみの声で我に返ったのか、すぐに冬木の時が動きだした。

「……ごめんごめん、何でもない! さ、早くご飯食べちゃおう!」
「お、おう」

 一体今の表情は何だったのだろう。
 やはり冬木千歳という人間はよくわからない。
 気になりはしたものの、俺もみなみもとくに触れることなく箸を進めた。