「確かに凄い偶然だな、こんな誰も来ないような場所でたまたま出会って、しかもたまたま三人分のひざ掛けまで用意されているなんてな」
「うっ」
「事情を説明しろ」
「はい……」

 全てを白状した冬木によると、みなみは昼休みになるといつも俺たちの教室に足を運ぶが、毎度のごとく俺がいないことを気にかけていたらしい。

「で、昨日俺がテニス用品を見ている間に俺がいつもここにいることを教えた、と」

 こくん、と隣に座っている冬木が頷いた。その向こうではみなみが「こんなところに隠れていやがったのか」といった目を俺に向けている。

「仕方ないだろ、教室は金髪女たちがいてうるさいんだから」

 冬木とあのギャル数名、どちらがマシかと言えばまだ冬木だ。冬木はうざいが、それは悪い意味ではない。うざ可愛いとでも言うべきか、愛嬌があるから許せるのだ。

 しかしあの金髪女たちはダメだ。うるさいし教師に反抗するし、噂ではいじめをやっているなんて話もある。人当たりのいい冬木でさえ避けている様だし。

 だから俺は昼休みのたびにここに逃げ込んでいるのだ。もちろんみなみに見つかりたくなかったというのも理由としてはないわけではないのだが。みなみは何かと口うるさいからな。

 ちくしょう、この場所を教えないよう予め冬木に釘を刺しておくべきだった。

 試しに、以前録画した壁打ちの動画を再生するべくスマホを取り出すも、寸前のところで身を乗り出したみなみに腕を掴まれた。

「誠、行儀悪いよ。食べ終わってからにして」
「……おう」

 ほらこうなった。
 母さんが亡くなってから一層お節介に拍車がかかったように感じる。俺の保護者にでもなるつもりか、みなみお母さんめ。

 冬木はそんな俺たちの様子を見ては楽しげに頬を緩めている。

「笑うなよ」
「だってみなみちゃんお母さんみたい」
「ほんと、手のかかる息子だよ誠は……」

 せめて姉にしてくれ。同級生が母親とかさすがにきついものがある。