切符を買ってホームに出ると幸いにもすぐに電車が来てくれた。このあたりで一番栄えているといっても一時間に三本くらいしか電車がこないのだから困りものだ。常に席が空いているのだけは気に入っているが。

 四人席に座って車窓から外を眺めると、窓に反射する自分の顔が目についた。いかにも疲労困憊といった感じだ、実際とてつもなく疲れた。

「さっきの話の続き」
「なんだ?」

 窓に反射するみなみがこちらを見ていることに気付く。

「誠にちゃんと友達ができたみたいで嬉しかった」
「そんな話をした覚えはない」

 どうやら俺と冬木のやり取りを見たみなみはあらぬ誤解をしているらしい。

「あいつとは友達でも何でもない。ただのクラスメイト」

 窓から目を離し、今度は直にみなみと目を合わせる。勘違いされないように、誤解されないように、しっかりと言っておく必要があるからだ。

「……まあそういうことにしといてあげる。でも、本当は仲良くなりたいんでしょ?」
「まーたお節介が始まったよ」

 わざとらしく呆れた素振りを見せ、再度窓の外に視線を投げた。
 妖怪お節介ババアとでも名付けようか。

 みなみは知っているはずだ、俺がどうしてテニスに執着するのかを。何故人を避けるかを。知っていてなお俺と人をつなぎ合わせようとするのだからそれはお節介以外の何物でもないだろう。

「いいじゃん、友達のひとりくらい。きっと誠のお母さんだって、テニスの約束よりも誠が誰かと笑っているのを見る方が――」
「悪いみなみ、その話はやめてくれ」
「あ……ごめん。私の悪い癖だね」
「ああいや、気にはしないでほしい。俺だって今の自分に思うところはあるからな」