「誠くんは?」
「悪い、俺も携帯持ってない」
「そっかあ……って、いやいやいや! いつもお昼休みにいじってるじゃん!」
「バレたか」

 こいつ今一瞬だけ騙されそうになってたな、惜しい。

「番号教えて!」
「断る」
「なんで!」
「夜中に鬼電してきそうだから」
「!」

 何故わかった、という表情で硬直する冬木。

「図星のようだな」
「うぐ……」

 ぶっちゃけこいつの考えていることは全くわからない。だが、狙っているかどうかはさておき、常に俺にとって都合の悪いことをしてくることだけはわかる。

 となれば俺の連絡先を入手した冬木が何をやってくるなど想像に難くないだろう。
 俺は諦めろと言い放ち冬木をあしらった。不満げな冬木が食い下がってきそうだったため交渉の余地などないと言わんばかりに視線も逸らす。すると、そらしたその先でみなみと目が合った。

 俺たちのやり取りを見ていただろうみなみの表情はまるで子供を見守る親のように穏やかなものだった。
 まったく、俺が人と話しているのがそんなに嬉しいのだろうか。

「うん、嬉しいよ」
「エスパーかよ」

 心の声に反応してきやがった。

「誠はわかりやすいからね」
「え、なになに? ふたりとも何の話をしてるの?」

 すかさず冬木が首を突っ込んできた。ややこしくなるからやめてほしい。

「いいからもう解散するぞ。冬木はここから歩いて帰るんだろ? 暗いし気を付けて帰ってくれ」
「大丈夫だよ、歩いてすぐのところだし! じゃあまた明日! みなみちゃんもまたね!」
「うん、またね!」

 笑顔で走り去っていく冬木を見送り、俺たちも帰りの電車に乗ることにした。