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 休日のショッピングモールは人が多い。
 駅の近くで、しかもこのあたりで一番規模の大きいモールともなればなおさらだ。どさくさに紛れて抜け出せないだろうか。

 しかしそれではみなみからテニス用品を搾取できない。それをわかっているのか、みなみは「スポーツ店は最後にしようか」なんて言ってやがる。途中で俺が逃げ出さないよう手綱を握るつもりなのだろう。

「ところでお腹すかない? 千歳ちゃんはもうお昼食べた?」
「ううん、食べてないよ」
「誠は?」

 ふたりして何かを期待するような目を向けてきた。
 これはあれか、みんなで仲良くご飯を食べましょうって言いたいのか。
 まずい、困ったぞ。

「すまん、俺はもう食ってきた……」

 白状した瞬間、期待で輝いていたふたりの目が死んでいくのがわかった。

「うわあ、誠……」
「誠くん……」

 やめろ、そんな「こいつ空気読めなくね?」みたいな目で俺を見るな。

「普通お昼に集合って言えば食べてから来るだろ……?」
「そっか、誠は友達少ないからこういうの分かんないか……」
「誠くん……気付けなくてごめんね……」
「やめてくれ」

 ふたりして俺を哀れむな。こういう些細なところからいじめに発展していくんだぞ。
 結局、ふたりが食べ終わるまでテーブルの隅でお冷を片手に待機させられることになった。もう帰りたい。