「それじゃあ早速行こっか。ええっと、冬木ちゃんって呼んだ方がいいのかな? 今日はよろしくね」
「こちらこそよろしくー! 私のことは千歳って呼んでほしいな!」

 呼び名を確認し合うふたりを俺は意気消沈気味に眺めていた。いや、眺めるというよりただぼうっと視界に収めているだけという表現が正しいだろうか。

 逃げ出せなかった精神的ショックのせいか上手く焦点が定まらない。冬木ひとりでも厄介だというのに、みなみまで一緒となればもう逃げ道などない。

 というか冬木め、こんな当たり障りのない会話ができるのならどうして俺にはやってくれないのだ。まあ普通に話しかけられても普通に無視するんだけど。

 微かな不満を抱きつつも、ショッピングモールへ向かい始めたふたりの後を俺は大人しく追うことにした。

「それにしても千歳ちゃんって肌白いよね~羨ましい」
「みなみちゃんの方が白くない? ちょっと手出して! 比べっこしよー」

 道中、そんな会話をしながら女子ふたりが前方を歩く。俺はその後ろを背後霊のように虚しく歩くだけ。