俺の作戦は至ってシンプルだ。
 冬木とみなみをふたりで行動させ俺は離脱。その後スポーツ用品店で買い物を済ませてから帰宅するという、徹頭徹尾無駄のない完璧な作戦だ。これならば冬木を待ちぼうけさせることも、俺が振り回されることもない。

 俺の作戦など知りもしない冬木は嬉しそうにみなみの両手をとると、湯切りをするラーメン職人を思わせる激しさでぶんぶんと上下に振り回した。

「覚えてる覚えてる! みなみちゃんっていうんだよね! 今日は一緒に遊んでくれるの!?」
「うん、お邪魔じゃなければ!」
「やったあ!」

 さすが冬木とみなみだ、ほぼ初対面の相手と一瞬で打ち解けている。
 これならば問題なさそうだ。あとは女子ふたりに任せて俺は撤退するとしよう。仲睦まじい女の子の間に男が入る余地はない。女子は女子、男子は男子というのが一番話が弾むのだ。

「それじゃ、俺はこれで」

 作戦を決行すべく、ふたりに背を向け颯爽と足を踏み出した。
 しかし二歩目を踏み出す直前、背後から人間とは思えない握力で腕を掴まれた。