まるで近場のコンビニにでも行くような恰好だ。冬木のことだから気合の入った派手な服でも着てくるのかと思っていたが予想が外れたようだ。

 意外とお洒落には無頓着なのだろうか。まあ俺は俺で灰色のパーカーに紺のズボンという何のひねりもない服装だからあまり人のことは言えないが。

「よう」
「ごめん待った!? ううん、今来たとこ!」
「ひとりで何言ってんだ」

 相も変わらず朝から騒がしい。そしてそれに慣れつつある自分が恐ろしい。

「それじゃ早速いこう!」
「いや待て」
「?」

 不思議そうに首を傾げる冬木を横目に、俺は背後の人物を呼んだ。

「こんにちはー。入学式の日にちょっとだけ会ってるんだけど、覚えてるかな?」

 その人物は大人びた黒のロングスカートを歩みとともに揺らしながら俺の横に並ぶと、落ち着きつつも気さくな笑みを見せた。
 白ブラウスの肩にはどこか高級そうな栗色のショルダーバッグがかけられており、俺や冬木と違ってあからさまに気合の入った服装は今日という日を楽しみにしていたことがうかがえる。

 そう、この人物こそが俺が用意した秘策であり最強の切り札みなみだ。
 どうせ暇だろうからと昨日の夕方あたりに誘ったところふたつ返事で了承されたので連れてきた。