授業まで一時間はあるぞ、まさかずっとこの調子なのか。
「……ぷっ」
心の中で頭を抱えていると、冬木が突然おかしそうに笑い始めた。
「ど、どうした?」
「いやあ、やっぱり誠くんは優しいなって」
「どこがだ……」
今の会話のどこに優しい要素があったというのだ。
「さっき私が泣いていた理由を聞かなかったのって、わざとだよね。だから優しいなって」
ハート型のネックレスを指先で転がしつつ、落ち着いた声色で語りかけてきた。
「そりゃあな。さすがにズケズケ踏み込むほどデリカシー欠けてねえよ」
「まあ、本当は聞いてくれるの待ってたんだけどね」
「おい」
聞くのが正解だったのかよ。女心わかんねえ。
「あはは、実はちょっと昔のこと思い出しちゃってさ。まあ昔という程前の話でもないんだけどね。たまにない? そういうの」
「あー……」
わからなくもない。俺も母さんが亡くなってしばらくはそうだった。
「ふとした時に思い出しては涙が出るんだよな。わかるぞ」
「よかった、わかってくれて」
「まあな」
こいつにもそういうのがあるんだな。
意外……と言うと失礼かもしれないが、少しだけ親近感を覚える。てっきり悩みなんてひとつもなくて、ただひたすら元気なだけの奴かと思っていた。
「……ぷっ」
心の中で頭を抱えていると、冬木が突然おかしそうに笑い始めた。
「ど、どうした?」
「いやあ、やっぱり誠くんは優しいなって」
「どこがだ……」
今の会話のどこに優しい要素があったというのだ。
「さっき私が泣いていた理由を聞かなかったのって、わざとだよね。だから優しいなって」
ハート型のネックレスを指先で転がしつつ、落ち着いた声色で語りかけてきた。
「そりゃあな。さすがにズケズケ踏み込むほどデリカシー欠けてねえよ」
「まあ、本当は聞いてくれるの待ってたんだけどね」
「おい」
聞くのが正解だったのかよ。女心わかんねえ。
「あはは、実はちょっと昔のこと思い出しちゃってさ。まあ昔という程前の話でもないんだけどね。たまにない? そういうの」
「あー……」
わからなくもない。俺も母さんが亡くなってしばらくはそうだった。
「ふとした時に思い出しては涙が出るんだよな。わかるぞ」
「よかった、わかってくれて」
「まあな」
こいつにもそういうのがあるんだな。
意外……と言うと失礼かもしれないが、少しだけ親近感を覚える。てっきり悩みなんてひとつもなくて、ただひたすら元気なだけの奴かと思っていた。