気まずい、気まず過ぎる。

「そ、そういえば、ノートありがとな、助かった」

 沈黙を破るべくノートを返すも、俺の耳に届いたのは「ありがとう」というひと言だけ。それが過ぎるとまた静まり返った。

 なんだこれ、どうすればいいんだこの状況。
 さっきまで泣いていた冬木を無視してスマホを出すのは論外だ、何も知らぬ顔をして教室に戻るのはもっと論外だ。無神経に泣いていた理由を訊ねるのもどうかと思う。

 ちらちらと様子をうかがうと、冬木は胸元のネックレスを握りしめていた。

「そ、そのネックレス綺麗だよなー!」

 気まずさのあまり考えるよりも先にそんな言葉が口から飛び出した。
 なんだこの話題。綺麗だよなって、そりゃあ綺麗だから身に着けているんだろ。自分で話を振っておきながらあまりのつまらなさに欠伸が出そうになる。

「ありがとう、私もそう思う」
「だよな、うんうん」
「あはは」
「ははは」
「……」
「…………」

 再び沈黙。もう嫌だ。