――四月十六日(木)

 また酷い夢を見た。
 昨日と同じ夢だろう。痛くて苦しくて、でもやはり、それがどんな夢かまでは思い出せない。

 呼吸が荒い。心臓が騒がしい。これ以上ない最悪の目覚めだ。
 深く息を吸い、大きく吐き出す。

 気分を切り替えよう、今日から仮入部が始まる。母さんとの約束を果たすための最初の一歩だ。

 俺に与えられた期間は三年間。だが毎日大会があるわけじゃない、実際に挑戦できる回数は限られてくる。直近では十月の県大会がそのひとつ、一年生が参加できる最初の大会だ。

 ベッドから起き上がると、机の上に置かれた冬木のノートが目に入った。
 あいつには悪いが、やはりこのまま関わり続けることはできない。
 ノートを返してそれで終わりにしよう。一緒にご飯を食べることも、帰路を共にすることもない。ただの他人になるのだ。

 準備を済ませ、借りたノートを鞄にしまうといつもより早く家を出た。