高校生にもなってハートマークを付けるなんて痛々しい。

「これ今日の授業の分。写していいよ。次の授業までに返してね!」
「え、いいのか?」
「うん!」

 なんだこいつ、天使か。

「さんきゅ、明日返す」

 正直かなり助かる。
 だが、こうしてずるずると関わり合いになるのも困った話だ。

 担任によれば明日から仮入部期間が始まるそうだ。本格的に部活動がスタートするのも時間の問題。

 俺はテニスだけに集中しなければいけない。だからこうして冬木と時間をともにすると焦ってしまう。
 もう俺には関わるな。ハッキリとそう告げなくては。
 しかしそれを聞いた冬木がどんな顔をするか。想像するとつい言えなくなってしまう。

 俺だって好きで人を避けているわけではない。
 誘いを断れば申し訳なく思うし、無視すれば心が痛む。冬木のような善人が相手ならなおさらだ。