冬木は心の底から嬉しそうな顔で俺に並んでくる。
 前髪が長いせいか、ぱっと見の容姿は地味だが、整った顔立ちをしているこいつが無邪気に笑う姿は正直可愛いと思ってしまう。いつも男子トイレでクラスメイトたちが「冬木さんってかわいくね?」などと噂をしているくらいには可愛い。

 そのせいで余計にわからない。人当たりが良く、俺より勉強ができて容姿にも恵まれているこいつが何故よりにもよって俺につきまとうのか。

 俺は別にイケメンでもなければ特筆すべき特技もない。探せばどこにでもいる地味な男だ。クラスでも当然のように浮いている。

 一方の冬木はどうだ。
 こいつがクラスメイトからカラオケに誘われている場面を今日だけでもう三回は目撃した。それらを断り、たった十分程度の帰り道を俺と歩く意味が皆目見当もつかない。

「なあ」

ふと疑問に思ったことを訊ねるべく口を開いた。

「どうしたの?」

 全く抑揚のない平坦な声で話しかけているのに、冬木はまるでお笑い番組でも見ているかのような無邪気な笑顔を見せてくる。その様子がますます俺の疑問を増長させた。

「俺と一緒に帰って楽しいのか?」
「楽しいよ?」
「うーん、やっぱりお前は頭がおかしいようだ」