――ああ、この誠くんは、私のことを知っているんだ。

 そう思った途端、涙が止まらなくなった。

 苦しかった。
 つらかった。
 毎日毎日心がすり減っていって、私を知らない誠くんを見るたびに頭がおかしくなりそうだった。

 でも、今ここにいる誠くんは私のことを知っている。
 また名前を呼んでくれる。

 そっか、徒労なんかじゃなかったんだ。

「……にしても、どうしてあんなことをしたんだ? いくら俺を助けるためと言っても普通できないだろあんなこと。死ぬかもしれなかったんだぞ?」

「うーん、意地になってた、のかな」
「意地?」

 聞き返す誠くんに軽く頷いて返す。

「そう、ここまで来たんだから死なせてたまるかーって。最初からそうするつもりだったよ。それに、私は死ぬつもりなんて欠片もなかったからね」

「なんだその根拠のない自信は……」

「根拠ならあるもん。だって私は誠くんと友達になるんだよ。それが私の決めた運命! 知ってた? 運命っていうのは強制力があるんだよ」

 茶化したように言うと誠くんが呆れたようにため息をついた。

「それ、屁理屈だぞ」
「そうだね。でも私は今もこうして生きてる」

 確かに屁理屈だけど、私はあながち間違いでもないと思っている。