「……ごめん」

「いや、わかってくれればいいんだ。無事……とは言えないが、こうして生きてくれているし。今はしっかり休んでくれ」

「うん、ありがとう。ごめんね心配かけて。それに……大会なんて年に数回しかないのに私のせいで台無しにしちゃった」

「なに言ってんだ、チャンスはまだ二年もある。それだけあれば充分だ」

 ぎゅっと、私の手を握る力が強まった。男の人の力で握られているはずなのに、不思議と少しも痛くない。それどころか暖かくて優しいもののように感じられる。

「そうだね、怪我が治ったらまた一緒に部活をやろう」
「ああ、もちろんだ。次こそは必ず優勝してみせる。だから」

 途中で区切り、誠くんは大きく息を吸った。そして――。

「だから、これからもよろしく頼んだぞ、千歳」

 そう言って、私の名前を呼んだ。

「――え」

 言葉を失った。
 今、確かに千歳って。