その直後に誰かが病室のドアを開く音が聞こえ、白猫はその人物と私をふたりきりにするために席を外してくれたのだと遅れて理解した。

「……お前、目が覚めたのか」

 そこには、制服姿の誠くんが立っていた。

 生きていると事前に聞かされていたのに、いざ目の前にいるのを見ると嬉しくなって涙が出そうになってしまう。

 ほんとのほんとに、誠くんが生きている。

「ついさっき目を覚ましたの。……県大会どうだった?」

 体は痛むけれど、なるべく心配をかけさせないよう努めて明るく振る舞う。

「あほか。あんなことがあったのに出場するわけがないだろ。馬鹿なことしやがって」

 そう言って、誠くんはベッドの側まで歩み寄ってきた。声はいつもと同じ調子ながら、ふと見えた表情は今にも泣きだしそうなものだった。

 誠くんは私の手を握ると「生きていてよかった」とだけ言って黙りこむ。
 その様子を見て私はようやく自分のしたことの重大さに気がついた。

 誠くんはお母さんを亡くしている。大切な人と別れることのつらさを誰よりも知っている。だというのに、私はあまりにも無茶な行いをしてしまった。

 誠くんはみなみちゃんが事故にあったらまた後悔すると言っていたけれど、それは相手が私でも同じことだったんだ。