「痛い痛い痛い!」
「そりゃあ痛いだろうさ! だって君、全身打撲と骨折だらけなんだもん!」

 白猫はこれでもかと私のお腹の上で地団駄を踏んでくる。きっと布団で見えないだけで全身包帯ぐるぐるなのだろう、白猫が動くたびに激痛で涙が出てくる。

「ボクはやめろって言ったよね!? わかってる!? 君が生きているのはただの奇跡! もっと自分の命を大切にして!」
「ご、ごめん! 謝るからもうやめて!」
「わかればいい」

 ずきずき痛むお腹から退いて、白猫は再びテーブルに座した。

「……で、彼のことなんだけど」
「うん」

 思わず身構えた。
 私にとって何よりも重要なこと。ずきずきと痛む体さえどうでもよくなるほどに、私は白猫の口から出てくる言葉だけに集中していた。

 そして、ひと呼吸の間を置いてから白猫は口を開く。

「……君の無謀な行いの甲斐あって生きてるよ。怪我ひとつない。もちろんみなみちゃんもね」

 それを聞いた瞬間、安心感が全身を包み込んだ。

「ほんとに?」

 念のため聞き返してみる。耳を疑ったわけでも白猫を疑ったわけでもなく、ただ誠くんが生きているという言葉を噛みしめるための再確認。

「うん、ほんとだよ。ぴんぴんしてる」