◇ ◇ ◇

「……生きてる」

 目が覚めた私が最初に口にした言葉がそれだった。
 白い天井が目にとまり、顔を横に向けるとよくわからない管が腕に繋がっていた。

 どうやら私は病院の個室にいるらしい。
 起き上がろうとするも上手く体に力が入らない。無理に動かそうとすると引き裂かれるような痛みが全身を襲った。

一体、私はどれくらいの間眠っていたんだろう。

「二週間くらいだね」

 疑問を口に出していないはずなのに、答えるような声が聞こえてきた。
 声の方向に顔を傾けると窓際のテーブルに白猫が座っていた。何故か牙を出して怒ったような顔でこちらを睨みつけている。

「ばーか!」

 白猫は怒りのままに私を罵倒してきた。

「えっと、うん?」

 どうして怒っているのだろう。
 そんなことよりも、誠くんは無事なんだろうか。

「そんなことよりもって……君、死にかけたんだよ? わかってる?」

 溜め息交じりに言われた。
 もちろんわかっているつもりだ。

「いいや、全然わかってないね」

 テーブルから立ち上がり、白猫はぴょんと軽やかに私のお腹に飛び乗ってきた。たったそれだけのことで全身に激痛が走る。