不思議と頭は冷静だった。

 そう、初めから決めていたんだ。こうなった時、私が代わりに事故に遭うのだと。

 今朝、私の心を読んだ白猫は「やめて」と言った。
 いくら恩があっても、たった半年間の付き合いしかない相手のために命を捨てることはないだろう、と。

 それは違う。
 私は命を捨てるんじゃない。あるべきところに返すだけ。だって、この命は誠くんに貰ったものだ。

 あの日、屋上前で誠くんと出会わなければきっと私は自ら命を絶っていただろう。こうして今日まで生きているのは間違いなく、誠くんが私の傍にいてくれたからだ。

 この命、一度は誠くんに救われたようなもの。
 だから今度は私が誠くんを救う番。

 それに私は死ぬつもりなんて毛頭ない。どれだけ大けがを負ったとしても、必ず生きて、そして優勝した誠くんと友達になるのだから。