「――っ」

 こむら返りか、それとも肉離れか、誠くんは額から汗を流し、足を抑えてうずくまっていた。それも無理はない、家からここまでの距離を私を乗せながら全力で、それもノンストップで走り続けたのだから。

 山を崩して道が作られることの多いこの土地ならなおさらだ。道中いくつも急斜面の道を乗り越えてきた。

 きっと漕いでいる最中にはもう足がボロボロだったのだろう。それを無視してここに来たに違いない。

 仮に足が平気だったとしても、恐らく別の何かが理由で誠くんはこの場所から動けなくなっていたに違いない。運命はどうあっても誠くんを逃がさないつもりのようだ。

「冬木、頼む、みなみと一緒にできるだけ遠くに――」
「それはできないよ」

 私は誠くんの言葉を遮って、大きく、深く息を吸い込んだ。

「何を言ってるんだ! もう時間がないだろ!」

 わかっている。
 時間がないことなんて重々承知だ。

 耳を澄ませばどこからか地鳴りのような音と振動が伝わってくる。数分どころか、もう数秒もない。間違いなく、ピンポイントでこの場所で事故は起きる。