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 切り開かれた山にできた一本の長い道。そこが私たちの運命の場所。

 前日まで降っていた雨によって濡れた木の匂いや埃のような匂い、そしてじめじめとした嫌な湿気が私たちを焦らせる。空を見上げればまた降りだしそうな曇天が私たちを見下ろしていた。

「みなみ!」
「みなみちゃん!」

 息も絶え絶えながら追いついた私たちは前方を歩くみなみちゃんを強く呼びとめた。

「誠!? それに千歳ちゃんも! なんで? もう会場にいるんじゃ……」
「その話は後だよ!」

 私たちは乱雑に自転車を乗り捨て、みなみちゃんに駆け寄った。横倒れになった自転車のタイヤがくるくると空回りしている。

 良かった、間に合ったみたいだ。

「みなみちゃん! 早く、早くあっちに行こう」

 もう時間がない。事態は一刻を争う。
 この場所はちょうど土砂崩れが起きる地点だ。このままでは最悪三人とも巻き込まれてしまう恐れがある。

 しかしこれも運命の強制力なのか、どうやらそう簡単には行かないらしい。